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小説「ゆめにっき あなたの夢に私はいない」感想

 今回読んだ、「ゆめにっき あなたの夢に私はいない」は、「ききやま」氏制作のフリーゲーム「ゆめにっき」を原作とした小説になります。執筆担当は、「日日日」氏、挿絵は「有坂あこ」氏です。
 私は、ゆめにっきとは、パソコンを使うようになってしばらく、elonaに出会って、一時期フリーゲームにはまっていたときに見つけました。そして、見事にやられたわけです。
 一応説明すると、フリーゲームとは、個人などが趣味で作ったゲームのことです。購入する必要はなく、自由に遊ぶことができます。やはり、内容はぴんきりですが、たまに凄く作りこまれたものもあります。

 さて、そんな「ゆめにっき」。どんなものかと言いますと、ひとりの「少女(一応主人公らしい)」が、寝るたびに訪れる(現実世界では寝ることしかできない)、不思議な「夢の中」をめぐる、というもの。明確な目標はなく、それどころか、物語すらない。
 夢の中で出会う不思議な人々、不思議な空間、幻想的な、あるいは狂気的な夢の中、そこに何が隠されているのか? どんな意味があるのか?

 ……とまあ、このような感じでしょうか。ゲームでありながら、「クリア」と呼ばれる終わりはありません。
 むしろ、夢の中を歩いている私たち自身が、「終わり」に向けての物語を作ってゆくのではないでしょうか。夢には、十人十色、千差万別の受け取り方があり、絶対の正解はありません。
 受け手の数だけ物語がある。そこが、ゆめにっきの魅力なのではないでしょうか。

 その点では、今回の小説化では、「明確な物語」が生み出されてしまうのが懸念でした。ひとつの物語のみが固定化され、自由な発想が難しくなるのでは、と。
 しかし、文章が上手かったのか、組み立て方が良かったのか、今まで私が思っていたことに加えて、そういう解釈もあるか! と感心しながら読み進めることができました。

 最後には、うるっとくる、苦しみながらも、「生きる」ことについての希望を見せる作品でした。

 追記からは、ネタバレ注意。

 フリーゲーム「ゆめにっき」が小説化された。
 非常に独創的な、幻想的な、あるいは狂気的な雰囲気を持つ、不思議な作品を、どうやって文章にするのか。そこがもっとも気になっていた。
 しかし、さすがはプロ。元の雰囲気を壊すことなく、見事に、新たな解釈のひとつを提示してきた。

 この作品をプレイして思うことは、ばらばらで、明確な答えなんてものはない。個々人が感じたことが最大に重要で、固定したものは必要ない。
 そういった点では、あくまでひとつの可能性として、物語として読んでも面白いように書ききった本作品は、非常に良かったと思う。

 ただし、原作ゲーム版をプレイしているから、そう感じるのであって、プレイユーザー以外がどんな感想を持つかは分からない。逆に、ファンだからこそ、認められない人もいるかもしれない。

 もちろん、私は、楽しく読ませてもらった。


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 第一部 あなた
 あなたは、辛い現実から逃避するかのように、眠りに落ちると、訪れる、不思議な夢の世界を歩いてまわっていた。忌々しい、恐ろしい、気持ち悪い、……やがて、あなたはわたしと出会う。

 第二部 わたし
 わたしは、わたしのことを認識してくれないあなたの後について、夢の世界をめぐる。「エフェクト」と名づけた、何かを示す不思議なものたちを、あなたは集めてゆく。わたしは誰? あなたは誰? ……わたしは、知っている?

 第三部 夢日記
 わたしは知っていた。わたしは病んでいた。それが真実か、間違いかなんて分からない。だけど、信じたい。明るい未来が来ると、あなたを守ってあげられると。あなたを殺すことなんてしない。……ただ、おはよう、と。

 終わり。

 とまあ、このように三部構成となっています。
 第一部は、ゲームでも操作することになる「三つ編みの少女」が、夢の中で行動している視点。ついで、第二部は、ゲームではNPCとして存在する「金髪の少女」が夢の中で行動している視点。最後の、第三部は、第二部から引き続き「金髪の少女」の視点で、現実の視点も合わせて、夢の謎を解き明かす解決編となっています。

 ちなみに、三つ編みの少女が「あなた」、金髪の少女が「わたし」、です。
 それと、「エフェクト」とは、(ゲームでは唯一の目的でもある)あなたが集めることになるさまざまなもので、傘だったり、信号機だったり、はたまた単なる髪型なんてものもあります。これも重要な要素のひとつです。

 ゲームをプレイしていたので、さまざまな情景が浮かんできました。ああ、こんなのもあったなぁ、こんな場所だったなぁ、こんなキャラクターもいたなぁ、これはあのエフェクトだなぁ、と。
 ゲームの雰囲気を壊すことなく、見事に文章化していました。
 個人的には、あなたとわたしの関係に、そういったものを見出すか! と思わず唸ってしまいました。

 受け手によってさまざまな解釈が生まれるということは既に述べましたが、この作品もまた、ひとつの解釈として納得のいくものでした。

 三つ編みの少女も、金髪の少女も、また、モノクロの姉妹や、先生(以上もゲームに登場するNPC)なども、ゲーム中では一切喋りません。ですが、小説では喋らせながらも特徴を掴み、違和感なく入り込んでいました。また、あなたは一切喋らず、それも高評価です。

 本作品は「夢」が舞台ということで、登場するキャラクターたちの行動や、姿などは、フロイトやユング(どちらも心理学者)的な解釈の仕方をしていて、これも興味深いものでした。

 最後まで謎めいたままの物語を、うっすらと予想を立てながら読み進めてゆくと……。

 以下から重大なネタバレ。




 (これも真実かは分かりませんが、作品内では)二人の関係は、わたしを母親として、あなたがわたしのお腹の中にいる胎児、というものでした。
 つまり、わたしは無意識にあなたと同じ夢を見ていた、というもの。あなたは最終的に、(ゲームでも、エフェクトを捨てて)夢から起きたのち、部屋のベランダから身を投げてしまいます。
 (ゲームでは、夢の中の夢から決別するためだったのか、あるいは本当に現実で飛び降りたのか、は、分かりません)。

 それが、流産の象徴なのでは? という解釈でした。
 また、白い蛇のようなもやもやしたもの(わたしは、あなたはそんなものを知る必要はないと言い放っていた)や、性的、卑猥な、にやにやした視線、などという言葉からも、子どもの妊娠を連想させると。

 わたしは、ありふれた悲劇、ありふれた現実だとは知りながらも、苦しみながら生きていたと語っています。その中で、唯一得た安らぎが子ども=あなただったのだ、とも。
 悲劇的な暴行の結果授かったのか、あるいは幸せな結果として授かったのかは、こちらで予想するしかありませんが……、せめて、救いのあるほうが良いですよね。

 さて、ここで流産の話に戻りますが、わたしは最後に、もしかしたら、あなたが飛び降りて死んだのは、わたしがあなたを殺そうとしたからなのかもしれない、と述べています。

 つまり、流産した結果、心が壊れて=夢で流産するまでの過程(あなたの飛び降り)を何度も見ることになった。のではなく。
 妊娠した結果、不安によって精神状態がおかしくなり、あなたがいなくなれば、苦しむこともなくなるはずという思いが、あなたの飛び降りを望んだのか。

 ということです。
 これも、私たちにはどちらが真実か、想像するしかありませんが……。

 やっぱり、救いがあるほうが良いですよね。エフェクト=今までの苦しさ=夢という逃避をやめて、現実を認め、前向きに未来を生きてゆこう、と、そういった思いになることができた「わたし」には、明るい未来を、欲しいですね。

 個人的には、「三つ編みの少女」と「金髪の少女」の関係を、このようにしたのは衝撃でした。そういう考え方もあるのか……。

 総括して、物語としては非常に面白く、謎めいたものが集束してゆくのは、読んでいて面白かったです。
 ゲームをプレイしながら感じていた、言い表せない感情を、ここまで見事に文章化したのは凄いと思います。
 ただし、これもあくまで、自由な「ひとつ」の解釈。この本を読んで、ただひとつ、これが真実だ! と言い切ってもかまいませんが、自分で感じたものも、大切にして欲しいです。

 「ゆめにっき」という作品は、この本を読む前でも良いし、読んだ後でも良いですが、興味があれば、是非やってみることをオススメしたいです。

2013-09-01 : 本(小説・漫画)関連 : コメント : 0 :
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