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小説「Another アナザー」感想

 今回取り上げる作品は、小説「Another アナザー」です。作者は「彩辻行人」氏。ジャンルは(ミステリ)ホラーになります。ページ数は600を超える大作です。今は続編も出ていますね。
 ホラーといっても、直接的な描写で怖がらせるものではなく、精神的にぞくぞくくる仕上がりです。さまざまな謎が、終焉に向かってゆくのに感心しました。

 今回、ai-rvdogさんのブログ「まったりな部屋」で取り上げられていた記事を読んで(ネタバレ記事だったので飛ばし飛ばしですが)、さて、と思い立ったわけです。よそさまのブログを見ていると、読んでみたい作品を知ることもできて良いですね。
 文章量自体はありましたが、非常に読みやすい書き方で、ぐいぐい引き込まれてゆきました。舞台は今から見ると一昔ですが、まあ入り込みづらいということもなく。
 最後には、思わずため息をつくほどののめり込んでいました。

 では、感想に移りたいと思います。今回はかなりじっくり読み進めたので、あらすじも、感想も、詳しく長いものとなっています。
 これから読もうと思っている場合は、あらすじの途中までなら良いでしょうが、結末のネタバレ、道中の過程を知りたくない場合は、見ないほうが良いでしょう。
 全編について、かなりはっきりとしたネタバレをしていますので、注意です。

 また、読んだ上で理解を深めるために、解説もついています。私個人の覚書になるので、もっと気になる場合は、「まったりな部屋」さんの方の記事も参考にすると良いでしょう。

著者 : 綾辻行人
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日 : 2009-10-30
 ミステリホラー。オカルト的な不思議な雰囲気もある。
 舞台は1998年のとある中学校。だがしかし、その学校には不思議な言い伝えがあって……?
 災厄と呼ばれる、次々と起こる不審な死亡事故をめぐって起こる動乱を描いた作品。

 さまざまな謎や伏線を、最後に綺麗に回収しながら、希望の持てる終わり方で締めていて、良かった。「いつか」の、未来に向かって生きてゆける。
 主人公たち登場人物の性格や、行動などが、物語性を強めるためだろうか、やや強引な展開だったり、設定だったりしたが、それも気にならないほど。

 ミステリ、サスペンス、オカルトホラーと、一度で三度美味しい作品だった。読み終えて満足できた。


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 1998年4月。15歳の少年「榊原恒一」は、父親の仕事と、自然気胸の発症を理由に、東京から、今は亡き母が育った、夜見山市の、夜見山北中学校に転校することになった。入院していた病院で、謎めいた少女「見崎鳴(ミサキ・メイ)」と出会う。
 5月。ようやく学校に参加することができるようになったが、所属している三年三組には、なにか薄ら寒い緊張感のようなものが漂っていた。誰もが、同じ組にいる鳴を、いないかのように振舞うのだ。
 鳴が言うには、二十六年前の出来事が原因で、もっとも死に近い場所だからだという。二十六年前、誰にでも好かれる優等生だった「ミサキ」の名を持つ生徒が、何らかの事故で死亡した。
 しかし、その後も、ミサキが生きているかのように生徒たちは扱った。すると、卒業写真には、ミサキの姿があったという。

 ここまでが前置き、という鳴の言葉を疑問に思ったが、続きを詳しく知る機を逸してしまった。そのまま、「いないもの」である、鳴の存在に、違和感を覚えながら学校生活を続けていた。
 だが、ついに「なにか」が始まる。三組の生徒、そして、その親や、兄弟が、立て続けに死亡したのだ。すると、三組の関係者たちは、恒一まで「いないもの」として扱うようになった。
 鳴や、二十六年前のミサキの担任だった、現在の司書「千曳」によれば、「死の呪い=現象」が始まったという。呪いが一度始まると、毎月ひとり以上の三年三組の関係者が死亡することになると。
 その際には、誰にも気づかれないで、過去に死んだ死者の「もうひとり」が、三組に加わっている。そのため、三組では増えた死者の影響を抑えるため、ひとりを「いないもの」として扱うようになったという。

 どうにも、腑に落ちない恒一だったが、誰にも文句を言われない「いないもの」としての生活を、鳴とともに過ごしていった。だが、効果はなく、ついに担任の教師まで死んだ。
 効果がない以上、「いないもの」として扱う必要はなく、生徒たちは恒一と鳴に、普通に話しかけるようになった。
 そして、「現象」を終わらせるため、恒一と、鳴と、同級生らは、行動を起こすことになる。そして、三年三組のOB「松永克巳」が残していたカセットテープから、災厄を止めるには、増えた「もうひとり」を殺す必要があると判明した。

 やがて、全ての真実が明かされた。鳴の死の色が見える目によって、今年の「もうひとり」は、三組にしかいない副担任の「三神怜子」……、恒一の叔母だと判明した。
 彼女は一昨年の現象で死んでいた。つまり、恒一が着たから現象が始まったのではなく……、既に確定したことだったのだ。
 恒一と鳴は、苦悩しながらも、怜子を殺害することで、今年の災厄を止めることに成功した。だが、「もうひとり」についての記憶は、徐々に消えていってしまう。
 このまま忘れるべきなのか……。恒一は、不思議な気持ちになるのだった。

 終わり。

 解説メモ

 三年三組の呪い:通称「現象(災厄とも)」。二十六年前、「ミサキ」を生きているものとして扱ったため、死に近づきてしまった結果、死者を呼び寄せ、死に瀕するリスクが増大した状態のこと。二十五年前から始まり、「ある年」と「ない年」がある。呪いの対象は、三年三組の生徒、及び、血の繋がった二親等以内の家族で、毎月ひとり以上が死ぬ。

 もうひとり=生きる死者:三年三組に、現象が発生する際、紛れ込んでいる存在。何らかの理由(主に現象)で死亡した死者だが、心も、記憶も、実体も持っており、自分が死者だとは気づかない。また、死者に関するもろもろの情報も改ざんを受けるため、卒業式を迎えるまで、誰も死者が紛れていることに気づけない。

 記憶の改ざん:現象に関わった者は、つじつまが合うように記録、記憶が改ざんされる。そのため、何かしらに記録を残しておき、「そうだったらしい」と思い出せる状況を作らないと、徐々に記憶が薄れてゆき、最終的には完全に忘れてしまう。また、名前などを書き残しても、認識できなかったり、消えてしまうこともある。

 いないもの:ひとりの死者が増えることへの対抗策。ひとり増えた分、ひとりの生徒をいないものとすることで、帳尻を合わせ、現象の発生を抑え込もうと言うもの。ただし、必ずしも効果があるわけではない。今回の場合は、見崎が対象。加えて、効力を高めるため恒一も対象になった。

 二十六年前のミサキ:本名「夜見山岬」。男子生徒。いやみのない優等生で、クラスの人気者だった。火災事故で死亡。彼の弟が最初の「もうひとり」だった。

 解決策:現象が起こるとき、三年三組には、二年までにはいなかった「ひとりの死者」が紛れ込むが、「記憶の改ざん」によって、誰が加わっているのかは分からない。しかし、ひとりの死者を見つけ出し、殺すことができれば、その年の現象は止まる。今回は、特異な鳴の目によって死者が判別できたが、過去に一度偶然の死亡事故で止まったことがある。つまり、通常、止める事は不可能といえる。

 1998年の現象:実は、最初から「ある年」で、4月の時点から死者は発生していた。4月。藤岡未咲。5月。クラス委員長桜木ゆかり、及び、その母親。6月。三組生徒の姉、水野沙苗。及び三組生徒高林郁夫。7月。担任教師久保寺、及び、その母親。生徒小椋の兄、小椋敦志。8月。同級生前島学。赤沢泉美。米村茂樹。杉浦多佳子。中尾順太。咲谷記念館の管理人沼田謙作、沼田峰子。以上で打ち止め。

 見崎鳴:左目の義眼によって、死の色を見ることができるようになった恒一の同級生。複雑な家庭環境を持っている。

 解説メモここまで

 で、結局「現象」ってなによ? ということですが、作中では、超自然的な自然現象と呼ばれていました。ようするに、誰かの悪意によって起こるものではなく、自然災害と一緒だと。
 そのきっかけが「ミサキ」だったわけですが、オカルト的に考えれば、まあ設定としては面白い話でしょう。現実的ではない、と論じることも結構ですが、夜見山ではそれが現実であるわけで。
 現象ついても、結局解決していないし、どういうものなのか? という説明もありません。

 そういうものだ、ということで、まず受け入れて読み進める人ではないと、楽しめないですね。私は、ミステリものもオカルトものも、結構読むのですが、楽しめました。

 今回は、読み進めながら、あれ、なんかおかしいな、という違和感を覚えていました。どこが、どう、とは言えないのですが、微妙なつっかかりを感じていました。
 それが最後の謎解きで一気に解消されて、うわぁ、上手だなぁ、と。
 作中には、結構謎を解く鍵がちりばめられていたんですよね。それを最後に綺麗にまとめることで、すっきりと読後の満足感を覚えることができました。

 読者にも、こうだよ、というヒントを出しながら、進めてゆく、ここら辺の話の構成の組み立て方や、文章力は、さすがプロ、といえるでしょう。
 最後には全ての謎に関する説明があるので、理解が間に合わなくても大丈夫です。

 超常的な設定、物語を楽しむことがメインですが、登場する人物たちの心情に想いをはせてみたり、「いつか」の未来に想いをはせてみたり……。丁寧な文章だからこそ、そういった想像力が刺激されます。

 逆に、丁寧だからこそ、登場人物たちの行動や事件を、現実味を持って受け止められない、ということもあるかもしれません。
 実際に起こりそうなホラーではなく、あくまでも物語的なホラーなためでしょうが、そこは重要な境かもしれません。学校を舞台としながら、良くある「七不思議」の範疇におさまらないため、でしょうか。

 さて、謎めいた鳴の今後や将来、恒一との関係。その他の同級生たちの進路。まだまだ彼らの動くところが見てみたい気持ちもありますが、ここで終わるから綺麗なのかな、とも思ってしまいます。

 「アナザー(もうひとり)」。何が? なぜ? どのように? 誰が? ……非常に楽しませてもらいました。

2013-09-07 : 本(小説・漫画)関連 : コメント : 0 :
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