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映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」感想

 映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」の感想です。
 これは映画館で見ようか迷っている間に終わってしまった作品で、ようやく見ることができました。
 見事な映像美。これは劇場でみるほうが正解ですね……。

 二つの選択を観客に示し、どちらを選び取るか、を考える映画だったと思います。美しく非現実的な話。残酷で現実的な話。
 ただし、どちらを選ぶのも受け手しだいで、正しい、間違っているということはなく、何かを信じることの大切さを訴えてくる作品だったと思います。

著者 :
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日 : 2013-06-05
 映像美がさすが。神秘的なストーリー構成にも、かなり力が入っている。
 話の内容も、受け手(観客)にある程度ゆだねて、受け手の選択次第にしていたのも良かった。
 宗教的な色が濃いような気もするけれど、知識などは必要ないので、宗教になじみのない人にも十分楽しめると思う。

 序盤は語りをメインとして進行するので、少々退屈かもしれないが、そこが中盤、後半での盛り上がりにかかっている。
 「恐怖」「哲学」「自我」などのメッセージがあったように思う。

 「神秘」と「現実」……、あなたはどっちが好み?


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 かつて少年時代、太平洋を漂流して生き残ったことのある男性「パイ・パテル」は、彼を取材に来た小説家に、漂流の体験を語った。

 過去、カナダを目指して航海していたのは、パイと家族たちと、嫌味なコックを含む船員たち、パイの家族が経営していた動物園の動物たち。
 しかし、突然の大嵐によって船は沈み、シマウマやハイエナ、オランウータンといった動物たちも死んでゆき、唯一生き残ったのは、パイと「リチャード・パーカー(トラの名前)」のみ。

 やがて、パイは、リチャード・パーカーとともに漂流しながら、生き残ろうと必死にあがき、メキシコへたどり着くことになるのだった。
 しかし、沈没事件のことを調べるため、やってきた日本人の調査員は、パイの話を真実として受け取ってくれなかった。
 そのためにパイは、漂流していたのはトラとではなく、パイの母親、コックの男、船員の男である。コックのために、母親、船員が死に、身を守るためにパイがコックを殺したという話をするのだった。

 最後に、パイは小説家に、トラと漂流した話。醜い人間の話。どちらが好きか? と問う。対して小説家は、トラの話が好みだ、と答えるのだった。

 終わり。

 美しい数である円周率πを名前の元とする主人公パイ。強暴な虎であるリチャード・パーカー。
 奇妙な二人組みは、277日間にも及ぶ漂流生活を送りますが、映画内に出てくる小説家は、トラこそがパイだったのでは、と推測しました。

 その根拠とは、美しい話にでてきた動物たちが、人間たちの話に出てきた人物を重なるからでした。
 足を折り、ハイエナに食い殺されたシマウマ=船員を殺し、食べてしまったコック。
 なんとか助かるも、ハイエナとの争いの末死んだオランウータン=コックと争い殺されたパイの母親。
 トラに殺されたハイエナ=パイに殺されたコック。

 残酷な話です。しかし、だからこそパイは自身の精神を守るため、美しい虎の話を作り上げることができたのではないでしょうか。パイは、リチャード・パーカーがいなくては、私は助からなかったと述べています。トラとの漂流の記憶は、精神の防衛だったのでしょう。
 幻想的な動物たちとの漂流生活の真実には、ガツンときました。

 しかし、私も、残酷な現実が真実の話だったと思いますが、美しい神秘の話のほうが好きです。苦境でありながら神を信じ続き、トラと共生しながら生き残った……、素敵でしょう?
 ただし、幻想的なトラとの漂流生活の中にも、不穏な空気は残ります。

 パイは、人を食ってしまう恐怖の島へたどり着いた話も語りました。その島は、植物に覆われ、大量のミーアキャットが生息している島でした。
 しかし、昼間は穏やかな顔を見せるその島は、夜、湖は酸性となり魚を溶かし、植物たちは食肉をする……、凶悪な顔を見せるのです。

 またこの島は、全体像がうつったとき、その姿は、人が寝ている形をしています。これにはどういったメッセージがあるのか、平和と争いの裏表激しい人間たちの社会をあらわしているのではないでしょうか。

 そしてリチャード・パーカーとの漂流生活の末、パイはたどり着いた海岸でリチャード・パーカーと別れます。厳密には、力尽き倒れこんだパイの元から、トラが去ってゆくのですが。
 この後、パイは「別れを言えない事が、もっとも哀しいことだ」と泣きます。

 パイは故郷で、初恋の女性と、そして沈没のために父親と、漂流生活の途中で母親たちと。次々と別れを経験してゆきますが、一度も別れを言うことができませんでした。
 そして最後には、自己の投影であるリチャード・パーカーとも別れることになります。

 菜食主義であり、穏やかな性格だったパイの投影が、肉食で凶暴なトラだった、というのにはどこか奇妙な、しかし合致した雰囲気を覚えます。
 パイの持つ精神の二面性(裏表)の一つがトラ(凶暴さ)であり、漂流生活の中で、パイは最後まで、他者を見捨てて自分だけが助かろうとするトラの心と戦っていたのではないでしょうか。
 しかし、最後にはそのトラの心も受け入れようとしていた……。

 だからこそ、その寸前で助かったことで、中途半端に終わってしまった関係に泣いたのではないでしょうか。

 パイは、動物を少年の頃から友人と思い、現在で小説家に家族は? と尋ねられたときも、猫と、子ども二人だ、と動物も含めていました。
 その猫こそが、一度は別れたリチャード・パーカーだったのではないか、と私は思いました。必要のない凶暴な心ではなく、愛らしい猫の姿となって、再会したのではないか、と。

 とまあ、長くなりましたが、感想はこんな感じで終えたいと思います。
 映像美で魅せるだけでなく、この作品が持つ深い意味を、自由に受け止められる、そういった魅力のある作品でした。

2015-06-12 : 映画関連 : コメント : 0 :
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