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小説「新版 チェルノブイリ診療記 福島原発事故への黙示」感想

 原発問題でいうと、チェルノブイリは切っても切れない関係にあります。それだけの衝撃を与えたのですから。福島の原発がきっかけとなり、様々な核関連の本が出ていますが、この本も、1998年に発売されたものの新版となります。
 本書『チェルノブイリ診療記』は、外科医である著者『菅谷 昭』氏が、五年半に渡り、放射性物質による汚染甚大なベラルーシという国で活動した(また感じた思いの)記録(レポート)をまとめた作品です。
 既に二年が経つ現在……、こういったものを通して、より理解を深めるとともに、風化させない、忘れない、という思いが大事なのではないでしょうか。

 五年半に渡るベラルーシ(チェルノブイリによる汚染が甚大な国)での体験記をまとめた作品。
 実際に赴いたものだから、原発による汚染の現状をリアリティをもって感じ取れた。
 分かりやすい文章で、著者が感じた想いが伝わってくる。作中で書かれている著者や、ボランティア、支援団体の行動力には、感心するばかり。

 内容としては、1998年のものだが、今現在にも繋がるものがある。

 弱者を守るための医療現場ですら貧困にあえぐ国。資源がないはずなのに、道具を湯水のように使う国。
 「間違った豊かさ」……、思わずなるほど、と唸ってしまった。


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 1991年、チェルノブイリ原子力発電所の事故によって汚染されたベラルーシを、著者は初めて訪れる。
 「何か大切なことを忘れているのでないか」。医者となった自分の腕を生かせるのではないか、そう感じて、訪れたのだった。
 劣悪な医療環境。時代に後れている外科手術。それらに衝撃を受けた著者は、これが運命だった、と1995年に、長年勤めていた信州大学を辞め、事故から十年経つ1996年から、ベラルーシに五年半に渡り滞在することになった。

 人間の生きかた。支援のあるべき姿。国のとるべき行動。本書では、実際の体験をもとに、さまざまな、問題を投げかけてくる。

 終わり。

  日本という、物が溢れている国がある一方で、生死に関わる医療現場でさえ、ろくな整備がされていない国もあると知っていても、実際に体験した人の話を聞くのでは、やはり、現実味が違います。
 放射能の専門家がどうのこうのと説明してくれる本のほうが、確かに知識を得るのには良いのでしょうが、体験記だからこそ、著者が感じた衝撃を、私もまたうっすらとですが、感じ取れたのだと思います。

 故郷を失った人々の話。「チェルノブイリは四番目の問題だ」と語る人……、そして資金難、劣悪な環境のせいで失われた命……。
 さまざまな体験を読むたびに、胸が苦しくなる想いでした。なにより、リョーバという少年の話は、とても悲しいものです。

 また、ボランティアによる支援も、「助けてあげる」という自己満足で済ませるのではなく、きちんと調査をした上で、必要としているものを選んで支援することが大事だと(当たり前のことですが)書かれていました。
 それ以外にも、患者とのふれあいや、「郷に入っては郷に従え」を見せ付ける、ちょっとくすりとする出来事など(さらにそこから発展させて、現状を観察する鋭い視点から書かれている)、読みやすい文章で書かれているので、折を見て読み返すのも良いでしょう。

 著者は「身勝手な行動ではじめたのです」と語っていますが、それでも、自分の中で確固たる信念があったからこそ、一所懸命に行動できたのではないでしょうか。
 「時間をかけてでも良い、ゆっくり進もう」と、焦りを覚えながらも、できることからきちんとやってゆく、だからこそ、(外科医として腕が高いという点もありますが)ベラルーシで受け入れられたのでしょう。

 「死ぬときに、後悔しない人生を」。そう思って行動した菅谷氏の体験記。生きる意味を見失っている、大切なことを忘れている、そんな人たちにこそ、読まれるべき作品です。
 できることからやってみよう、そんな前向きな気持ちになるはずです。ゆっくりでも良い、一歩ずつ進んでいきましょう。

2013-04-14 : 本(小説・漫画)関連 : コメント : 0 :
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風見澄香

Author:風見澄香
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