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小説「舟を編む」感想

 久しぶりの読書感想文になります(苦笑)。本自体は読んではいたのですが、なかなか感想記事を公開する機がなかったというか……。
 言い訳させてもらうと、私の中ではきちんとした流れがあるんですよね。それで、その流れにそって記事を書いたり、行動したりしているんです。うまく説明できないんですけど……。

 さて、そんなことはさておき、今回取り上げる本は光文社より出版された『三浦しをん』氏の作品『舟を編む』です。辞書作りの裏側を軽妙なテンポの良さで書いています。
 これから映画も公開されるので、それも楽しみです。

 三人の視点を移動しながら、ラストに向かうストーリーが良い。
 「辞書作りの裏側」を、どこかコミカルに描きながら書いていることで、あっさりと読める爽やかな作品だった。
 逆に言えば、そこまで堅苦しいものではないので、事前の予想と違うと困惑するかもしれない。

 「辞書」や「言葉」という、とても身近にありながら、(たいていの人は)そこまで深く考えないものをテーマにしていて、思うところがあったし、深く感動した。
 込められた思想、メッセージ。私はそれをきちんと受け止めることができたのだろうか……。

 とても読みやすい文章なので、活字に慣れていない人にもオススメできる。むしろ、言葉に興味がない人にこそ読んでもらいたい。


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 『荒木公平』は、少年期のふとした出来事から「辞書を作りたい」という想いを抱き、必死になって勉強に励んだ。やがて、大手の出版社『玄武書房』へ入社し、夢叶い編集者として精力的にいくつもの辞書を生み出してきた。
 だが、そんな彼も定年を迎えた。体調の悪い妻のこともあり、もう編集者を辞めることを決めていた。彼は自分の後継者となるべく人物を探し、玄武書房の営業部にいた青年『馬締光也(まじめみつや)』に目をつける。言葉に関しての豊富な知識と、それを活用する力を持った馬締。これだ、と直感した荒木は、彼に新たな辞書『大渡海』の編集を任せるのだった。

 辞書編集部に異動した馬締。数ヶ月が経ち、『西岡』や『佐々木』といった同僚、編集者の『松本先生』との辞書作りに充実感を覚えるも、生来苦手な人間関係に疲労しながら、いつも通りに下宿している早雲壮に帰った。
 ところが、彼一人しか下宿していないそこで、馬締は、大家の孫娘『林家具矢(はやしかぐや)』という女性と出会い、一目惚れするのだった。

 辞書作りに、恋に、今までにない生活を送る馬締。しかし、順風とは行かなかった。交渉役として頑張っていた西岡の異動が決まり、また会社からもたびたび横槍が入って、大渡海の編纂は遅々として進まない。
 そうして、馬締が編集部に移ってから、実に十五年という時間がかかり、ついに『大渡海』は完成する。
 異動しながらも携わってきた西岡。完成間際で亡くなった松本先生。彼らの想いを受けて、大渡海は、世に送り出されたのだった。

 終わり。

 生きている「言葉」の大切さを教えてくれる作品でした。今まで特に気にも留めなかった「言葉」というものについて、今一度考えをめぐらすきっかけとなりました。
 作中で書かれている「言葉は自然に生まれ、自由に生きつづけるものである」というものには、深く感銘を受けました。
 今まで、「言葉」があることを当たり前に受け止めてきた私にとって、冒頭で「荒木」が、様々な言葉に「面白さ」を感じる場面は、そういった点では衝撃でした。
 これは余談ですが、辞書を引くことを教わった子どもたちって、言葉に対して非常に敏感になるらしいですね。例えば、付箋とかラインペンとかを使うことも効果的らしいです。

 さて、本作品は、大きくわけて三人の視点から描かれています。

 辞書編集部に引き抜かれ、辞書作りと初めての恋愛に右往左往する馬締。
 辞書編集部で活躍する馬締に嫉妬を覚え、自分は何がしたいんだろう、と苦悩する西岡。
 ファッション誌の部署から辞書編集部に異動になり戸惑う岸辺。

 彼ら三人が、それぞれ自分の問題に決着をつけながら、物語はラストに向かってゆきます。そろそろ終わりかなぁ、思ったら、お、次の話か、となり、文章も軽くテンポが良いので、飽きさせない仕上がりでした。

 私が特に感情移入したのは、西岡の話です。彼は主役級三人の中では、もっとも明るい性格を見せながら、しかし内に鬱屈した想いを持っています。

 馬締に対する嫉妬から発して、彼は「自分の世界」を持っていないと愕然とするのです。「誰かの情熱に、情熱で応える」ことをせずに、ただただ流されるまま生きてきた。
 大渡海の編纂作業からも外れて、忘れられるんじゃないか、とか。彼は一般人として等身大に描かれていて、苦悩していることがびしびしと伝わってきました。
 だからこそ、彼が自分の中で結論を出して、ふっきれる部分では思わず拍手をしたくなりました。最後に、大渡海のあとがきに自分の名前を見たとき、どれだけ嬉しかったのだろうか。

 失敗や否定を恐れて行動していちゃあ、ダメなんだな、と。何か一つにでも情熱を注ぎ、妥協を許さない姿勢が重要なんだと感じました。
 己ができることの役割をきちんと理解すること。周囲の人間の良さを素直に認めて、さりげなく手を差し伸べることの重要さ、大切さを見ました。
 
 逆に、馬締や岸辺は、意外とあっさり問題を解決してしまって(例えば、馬締の場合は恋愛。岸辺の場合は辞書作りへの想い)ちょっと拍子抜けというか。
 やっぱりページ数が少なかったですから、そこまでさけなかったのかなぁと思いました。あとは、主役三人以外の人間の表現が希薄な部分があるかな、と。
 辞書編纂に関わる人たちの苦労をもっと見てみたかったような気もします。
 それでも、適当な量だったかな、とも思うので、変に伸ばすよりは、お話として面白い流れだったし、これで良かったと思います。

 さて、またとりとめがなくなる前に、ここら辺で切ることにします。
 色々と思うところがあったということで、とてもためになった本でした。今まで思うことなく使っていた「辞書」も、これから注意してみてみようと思います。

2013-04-07 : 本(小説・漫画)関連 : コメント : 0 :
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