ゲーム・本(小説・漫画)・映画などの感想レビューがメインのブログです。

小説「プラチナデータ」感想

 今回の感想記事は、『東野圭吾』氏の作品『プラチナデータ』です。ジャンルはミステリ。
 来月映画化されるということで、見てから読むか、読んでから見るか迷ったのですが、映画は何度も見返すのは大変なので、先に本を読んでしまうことにしました。
 かなり面白かったです。先がきになってきになって、一気に読み進めてしまいました。

 現代社会への警鐘。
 現代社会が抱える負の側面と、人間それぞれの本来あるべき姿を描いている。

 最後までぐいぐい引き込まれて、登場人物とともに謎を解き明かしてゆくのが面白かった。
 どうして、なぜ、と登場人物が謎を推理してゆくのは、ハラハラして一気に読んでしまうほど。
 作中で起きていた事件の犯人については、ふうん、という程度だったが、問題はそこじゃない。

 謎かけや伏線が上手く、最後は唸ってしまった。しかし、最終的な結末は、仕方のないことだ、と思うことはできない。
 とはいえ、その現状での最善ではあったのだろうし、読後の余韻も悪くない。


 以下ネタバレ含む感想。

 あらすじ。
 日本国民のDNA情報を管理して、DNAから犯人を特定するシステムが施行された。
 そのシステムを担うのは『警察庁特殊解析研究所』。そこで主任解析員を務めるのは『神楽龍平』という男だった。
 彼は、贋作を見分けられなかったことを苦に自殺した陶芸家の父を持ち、その父の死をきっかけにして二重人格者となってしまっていた。

 神楽の中に住まうもう一人の人格『リュウ』。ただひたすらに絵を描き続ける彼の心を、神楽は、『新世紀大学病院』の医師『水上』の診察を受けながら、解き明かそうとしていた。

 しかし、ある日、神楽と親交もあった、新世紀大学病院の患者で、DNA捜査システムを開発した天才『蓼科早樹』とその兄が何者かに殺されてしまう。

 刑事『浅間』は、チームを率いて犯人逮捕に向けて行動するが、その前に、神楽が調べた手がかりとなる遺留物のDNAが示したのは『神楽龍平との適合率99.99%』というものだった。
 当然、神楽は殺していない。では、誰が? リュウが殺したのか?
 混乱する神楽の前に、リュウの恋人だと名乗る『スズラン』という少女が現れる。彼女は、リュウの描く絵の謎を解く必要がある、と言い残して去って行った。
 一体何が起こっているのか。アメリカから蓼科早樹の作っていたプログラム『モーグル』を手に入れるため来ていた『白鳥里沙』、そして疑問を感じて単独行動をとっている浅間と協力して、謎の解決に臨む。

 事件の謎を握るのは、『モーグル』と『プラチナデータ』と呼ばれる何か。

 やがて、神楽は事件の真相に迫ってゆく……。

 終わり。

 最初に、重大なネタバレを書きます。

 スズランの正体は、リュウの目から見た蓼科早樹。
 プラチナデータとは、国の官僚などの重要人物の暗号化されたDNA情報のことで、彼らが罪を犯しても逮捕されないようにしたもの。
 モーグルとは、プラチナデータを解読するためのプログラム。

 さて、本作品プラチナデータは、国民のDNAをデータベースとして揃える管理社会へ上がってゆく日本を描いた作品でした。
 管理社会を描いた作品は結構な数があり、私もSFもので何度か読んだことがあったと記憶しています。

 しかし、この作品は現代日本が舞台であり、十分に実現可能そうに見えるというところで単純なSFとは異なっています。
 現実に、私たちは日々監視される生活を送っています。カメラしかり、データのやりとりしかり。

 DNAのデータベース化。それは確かに犯罪検挙率を上げ、防犯の抑止となるでしょう。私もその点においては、特に問題を感じません。
 ですが、作中で神楽が言うとおり、プラチナデータという安全な隠れ蓑を用意することで、階級制度がさらに強固なものとなってしまったのが問題なのです。

 これは荒唐無稽な話でしょうか。
 一部の特権階級だけが甘い蜜をすすり、平民は虐げられる。これは現在でも起こっていることです。

 神楽は、プラチナデータを解き明かすために行動しましたが、国からの『お願い』によって、断念せざるを得ませんでした。そして、山奥の集落で、陶芸をして過ごすことになりました。

 神楽とリュウ。
 二重人格となった二人ですが、絵を描き、芸術を愛したリュウこそが、本来神楽が歩もうとしていた姿なのではないかと思います。
 陶芸家の父を見て誇りに思いながら、しかし、父の死をとめることができなかった。それが原因で、彼はリュウを捨てようとしたのではないでしょうか。

 贋作か、本物かどうかは関係ない。作品はあくまで作者による結果であり、重要なのは、作者が何を思って作品を作ったのか。作品を生み出した作者の心なのです。
 そのことに気づいた神楽は、かつて失ったものを取り戻すことができたのでしょう。

 現在ですら、本物に限りなく近いリアルな贋作は存在します。しかし、贋作はどれだけ形をまねたとしても、作者の心までは写し取ることができません。
 結果だけを見るのではなく、その過程、原因となるものを見つめることが大切、ということです。

 かつてはデータだけを信じていた神楽と、心や経験を信じていた浅間の二人が、和解し、共通の敵に立ち向かっていくのは良い展開でした。

 現代社会が抱える問題、それを浮き彫りにする作品だったと思います。

2013-02-28 : 本(小説・漫画)関連 : コメント : 0 :
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

呟き


プロフィール

風見澄香

Author:風見澄香
 据え置きはPS4しかないSONY大好きな雑食管理人。
 購入するゲームはほとんどPS4のもの。
 あとはヴァイスシュヴァルツと携帯電話のアプリゲームを趣味程度にやっています。

カレンダー

ブログ内検索

アクセスカウンタ

本棚

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ